富士山に見立てたお盆にやられた購買心理

2021年5月11日

「お膳にゃ富士のお山が写り込み、根来の盃は朱(あか)くて朝日の様だ。」


ギャラリー志麻さんは、「小さな蕾」という古美術月刊誌に毎号、ちょっとした落語のような小話を広告として出されています。
面白い広告の出し方だな、と思って毎回読んでいたのですが、今回、お盆の木目を富士山に、根来を朝日に見立てる小話を載せていました。私はそれにすっかりやられてしまい、個人的に存じ上げないのですが、電話してお値段を聞いてしまいました。


さぞ高いのだろうと思いきや、それほどでもなく、迷っていたら「送るから実物を見て、確認して、それから決めてください」とのこと。古美術商さんでは、たまにそういうことがあるのは知っていましたが、このお値段でそこまでしてくれるのか、と驚いてしまいました。
根来の盃も欲しいと思いましたが、「お酒飲まないしな…」と思ってそちらは見送りました。
今思うと、そこに一品料理が盛られていたら、値段を聞いていたかもしれません。


ここで私が感じた重要なポイントが3つあります。


1つ目は、ストーリーを持たせる、ということです。
広告をストーリー仕立てにしたことで、商品の価値を底上げしたこと。どんな商品でもそうですが、同じ商品が並んでいても、何らかのストーリーがある方が、価値を感じるものです。私たちは商品そのものではなく、ストーリーを買っている、と言っても過言ではありません。


2つ目は、比較対象を予め決めておく、ということです。
古美術雑誌の広告ですから、比較対象はただのお盆ではありませんでした。当然と思われるかもしれませんが、お客様は勝手に比較対象をこちらが意図しないものにしてしまうことがあります。例えば、ダイエットサプリなら、他のサプリではなく、エステやジムと比較すれば安く感じます。
今回は、木目を富士に見立てたことで、おめでたさが出たことと、希少価値があるのでは?と客に思わせたこと。
知識が乏しい私としては、今まで見てきた古い木のお盆が10万円くらいするお盆だったのです。


3つ目のポイントは、断る理由をなくす、ということです。
「気に入らなかったら送り返してくれればいい」という気のいい店主の言葉に、断る理由もなくなってしまった私は、送ってもらうことにしました。
こちらはリスクを何一つ負わないわけです。むしろ、そこまでしてもらって悪いな、、、とさえ思ってしまったのです。
もちろん、よほどモノが写真と違えば買うことはありませんが、ここまで来たら、買う確率は何倍にも上がるだろうと思うのです。


商品を買うことで、私たちは知らず知らずのうちに様々な購買心理が働いています。
あなたの商品には、どんなストーリー、比較対象、断る理由がありますか?


最後に、無事手元に到着したこのお盆は、「富士盆」と名付けて、我が家に加わってもらうことになりました。