5万円になった図録の価値

2021年6月09日

前回の続き)

余談ですが、「古九谷 珠玉の小品」という図録、とても素敵で手の込んだ銘品ばかりでした。

見ているだけも楽しいので、欲しいな〜

と思ったのですが、今は中々手に入らないそうで、業者さんでも探している方がいるくらいだそうです。
このお話を伺った頃は、2万円で売られていた、という情報だったのですが、
今調べたら、ヤフオクで5万円で出品されていました。(2021年6月6日現在)

   

5万円が適切かどうかはわかりませんが、どうしても欲しい人がいれば
「仕方がない、もう手に入らないかもしれない」
と思ってこの値段でも買うのかもしれません。

 

もしくは、
「こんな値段つけて!」と怒る人もいるかもしれませんね。

図録ですから、元はきっと二、三千円程度。高くても五千円もしないはず。
どんな世界でも、こうやって希少価値のあるものの価格が上がるわけですが、この古書屋さんは、ここぞとばかりに高値をつけたわけです。

 

10倍以上の価値になってしまった図録もすごいな、と思います。
欲しい人がいる、ということですね。
もう少し多く刷られていれば、違ったかもしれませんが・・・。

  
さて、あなたがその古書屋さんならどうしますか?
もし、お客さんが買ったとしても、この古書屋さんのことをどう思うでしょうか?

私なら、
「今回は仕方ないけど、ここはもう利用しないぞ」
と警戒心剥き出しになってしまいそうです。

だからと言って、安く提供しますか?

 
では、価格が10倍になっても、喜んでもらうにはどうしたらいいのでしょうか?

 

もし、この古書店が、

「この図録は、専門家でも探しているくらい貴重なもので、滅多にお目にかかることがなく、当店でも長らく探していて、やっと見つかった一冊です。ですので、できるだけ本当に必要な方の手元に置いていただきたいと思います。今後、いつ入ってくるかわかりませんし、同価格でご提供できるかどうかもわかりません。」

と書いてあれば、どうでしょうか?

大分印象が変わりますよね?
ついでに、この古書店は貴重な本を探してくれる、というお店の価値まで上げることになります。

 

一見ずるいように思われるかもしれませんが、5万円という価格を付けたということは、この図録の価値を知っていたということです。おそらく、目を光らせていたことでしょう。そのことを伝えるか、伝えないか、それだけで買う側は、気持ち良く買うことができるのです。

 

私たちは、どうすれば自社の商品やサービスの価値を伝えることができて、顧客に喜んで手にしてもらえるのか、常に考える必要があるなと思ったエビソードでした。